祖母が死に、たまに農作業を手伝っていた父も病弱になって、今では田畑を耕す者は誰もいない。私も信州で病院勤めをしているので、群馬の山村の田畑は荒れてしまっている。昨年、親戚筋の人からどうしても売ってほしいと頼まれて畑を売った。そこは南に面した急な斜面の畑で、主に麦を作っていたところだった。祖母と二人、斜面にへばりつくようにして草をむしり、麦を刈った畑だった。私は祖母との想い出の宝庫であるその畑が人手に渡るところを見たくなかったので、売買は代理人を頼んで行った。そして、土地の代金で新しく広い墓を造り、祖母や祖父たちにゆっくり休んでもらうことにした。ここ数年、厄年のためか体調がすぐれない。内科的な検査には異常がないのだが、どうにもすっきりしない。男にも更年期障害があるらしいので、どうもそれかも知れないと同僚の心療内科医に相談したら、ストレスから来る自律神経失調症だと言われた。いわゆるうつ病のようなものである。なぜ、それほどまでに心にストレスをためるようになってしまったのか。心療内科医との話し合いで明らかになったのは、私が体を使わず、頭ばかりで生活していたという事実であった。