常にアートと商業の狭間で揺れてきたファッションも、ここ数十年のうちに徐々に商業側に偏りがちになっている。このため、多くのデザイナーが、生き馬の目を抜くようなビジネスの現実と芸術的表現とのバランスをどう取るかという難問に取り組まざるを得なくなった。もはやゴージャスなコレクションをデザインするだけではダメで、とにかく売れなければいけないのだ。「イヴーサンローランの引退表明の裏には、儲かるか?とか、ビジネス上の問題以外の何物でもない部分というのもあるんだ」。ファッションカメラマンのランディーブルックスが語る。「昔はファッションをアートとして見るデザイナーがもっといたと思う。今では企業が牛耳ることが多くなって、最終的に金対アートという図式になっているわけさ」。革新的なプロモーション契約の例があちこちで見られるようになっている。ドルチェ&ガッバーナは、二〇〇一年にインーシンクとタイトのツアーに衣装協力し、続く二〇〇二年にはオーストラリアのポップースター、カイリー・ミノーグにも衣装を提供した。ホルストンはマライアーキャリーの最新ツアーの衣装を担当。トミー・ヒルフィガーは、一九九九年にブリトニー・スピアーズのサマー・ツアーのスポンサーとなっている。この際には、北米主要五〇都市を回るツアーに合わせて、ヒルフィガー側も宝くじを使った店内プロモーションやラジオープロモーションを展開。ブリトニー本人もトミー・ジーンズのアウトレットに登場している。