売り主(デベロッパー)は大手商社系で、施工会社は最大手のマンションメーカー。建築の専門知識がない一般購入者がこの記述をみれば、「なにかスゴい技術を駆使している」と思う体裁だ。ところが、解説を読んで愕然とした。外壁の断面図には、鉄筋コンクリート部分の厚さが一一五ミリ、断熱材が一五ミリ、プラスターボード(石膏ボード)が九・五ミリとある。正直に書いてあるのはいいとしても、それぞれの数値が、私たちの考えている標準値や他の標準的なファミリータイプの物件と、大きくかけ離れていたのである。標準値を挙げると、鉄筋コンクリート部分の厚さは一五〇ミリ以上、断熱材は二五ミリ以上だ。しかも外壁の鉄筋はすべてをダブル(二重)に配するのが一般的なのに、その物件では一部がシングル(一重)配筋となっていた。これでは耐久性に不安があるうえ、断熱性が低いので結露の発生が考えられるし、遮音性などの面でも問題を残している。それでも知名度の高い売り主と施工会社が〈ハイクォリティな設備・仕様が住まいの質を、暮しの質まで変えます〉と謳うと、それを信じ込んで買ってしまう購入者が現れるのである。実際に販売事務所の壁に貼り出された各住戸の契約状況を見ると、予約済みを示す赤いバラの造花で大半が埋められていた。表記にウソはないし法的にも問題はないのかもしれないが、ブランドイメージを盾にして購入者の誤解を招くような行為は許されることではないだろう。こうなると購入者は多少なりとも建築の知識を身に付けて自己防衛するしかない。いったいどのような性能を有している物件が、耐久性、耐震性、断熱性、遮音性などの面で優れているといえるのだろうか。それを考えていくことにしよう。