仁川の街にいてもすることはなにもなかった。僕らは昼頃、港の国際フェリーターミナルに出向いて切符を買った。最も安いエコノミークラスでひとり十一万七千二百ウォンもした。日本円で換算すると一万四千円ほどである。バス運賃の感覚からすると、フェリーはずいぶんと高い気がする。乗船は四時と伝えられ、僕らはターミナル前の広場で待つことにした。いい天気だった。日本でいえば小春日和とでもいうのだろうか。僕らはベンチに座ったのだが、近くにある植え込みの縁に並べられている、おにぎりやサンドイッチが気になった。
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昼食を食べていなかった僕らは、それが売店なのかと思ったのだ。しかしそれから間もなく、その前で繰り広げられる光景に、僕らの視線は釘付けになってしまった。港には中国を昨夜、出航したフェリーが次々に到着しているようだった。この港からは中国の営口、姻台、石島、大連、秦皇島、丹東、威海、青島といった港へのフェリーが就航していた。一隻のフェリーでやりくりしている路線が多いようで、一日おきに仁川港に到着して出航するというスケジュールが組まれていた。これだけの路線があると、毎日、数隻のフェリーが仁川港に到着することになる。