いまでは誰もがワープロソフトを使っているから、ありがたみも何も感じなくなっているが、コンピューターで文章を組むということは、四十年前には誰ひとり考えてもいなかった。一般向けの商品としての日本語ワードプロセッサーは一九七八年に発売されている。印刷業界がコンピューターを使った組版を構想するのはそれより少し遡るが、一九六〇年代以前にはコンピューターそのものが珍しかった。コンピューターというのは、ご存知のとおり、第二次世界大戦中に弾道計算をおこなうために作られたものだが、当初は真空管駆動でとても安定して動くものではなかった。戦後、トランジスタやIC、それにプログラミング言語などの画期的な発明があいつぎ、爆発的に発達してきた。それでも昔のコンピューターは、いまのように愛想のいいものではなかった。一九六〇年代のコンピューターには、現在では当たり前のようについているディスプレイ画面などない。入力も、いわゆるパンチカードだった。そんな状態のものを印刷版下作成に応用できないかと考えた人は、よほど想像力が豊かだったのだろう。もちろん、コンピューター組版のはじまりはアメリカである。
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